2009年10月18日

横笛の吹き方 楽譜の曲の覚えかた

「横笛用のジブリの楽譜はありませんか」という問いあわせをお客さんから頂きました。
過去にも同様のメールを何回か頂きましたので、きちんと説明します。

エリックさんの横笛やトニーディクソンのフルートなど、西洋の6穴笛はまだまだマイナーな楽器ですから、専用の楽譜はありません。ですから街の楽器屋で売っているふつうの楽譜を見ながら曲を覚えることになります。

知っている曲、覚えている曲であること

言わずもがな、知らない曲・聞いたことのない曲を楽譜から読みとるには相当の鍛錬を必要とします。ですから今から笛で吹く曲は、既に知っている曲、覚えている曲であることを前提とします。つまり笛で吹きたいなと思っている曲は、ぜんぶそらで歌える、鼻歌で歌える、口笛で吹ける曲に限ります。

知らない曲、うろ覚えの曲の場合は?
聞いて覚えるのが先です。CDを買ってきてカラオケを覚えるように、何度も繰りかえし聞きながらいっしょに歌って覚えます。CDを買わなくても、インターネットでYouTubeの動画やフリーの音源を見つけることができればお金はかかりません。

少しは楽譜が読めること

ここでは楽譜を読めない人のために、楽譜を見ながら曲を覚える方法を説明しています。が、ほんとうにまったく楽譜が読めないようではどうしょうもありません。せめて小学校の音楽の時間に習った程度の知識は必要です。まったく楽譜が読めない人は楽譜の読める人に基礎を教わったり、楽譜の読み方の本を買って自分で勉強してください。

オカリナやリコーダー用の楽譜がお勧め

楽譜はオカリナやリコーダー用がよいと思います。同じ笛族ですし音域もにたようなものですし。吹きたい曲がうろ覚えなら、お手本CDの付いた楽譜を買うとよいでしょう。音符の下に歌詞が記入されている楽譜は、メロディーを追いかけやすく読みやすいです。

横笛の音階について

横笛で使う音階は次の2とおりです。
実際、ほとんどの曲はこのどちらかの音階で吹けるものです。横笛の音域はがんばって2オクターブ程度です。それに収まらない曲は吹けません。諦めて他の曲にしてください。

なお小さな笛でも大きな笛でも、関係なくこのとおりです。
同じように吹いても小さな笛なら高い音に聞こえる、大きな笛なら低い音に聞こえる。それだけのことです。

横笛の音階 (第一ポジションと言います)

○…指穴をあける、●…指穴をふさぐ


横笛の音階 (第二ポジションと言います)

○…指穴をあける、●…指穴をふさぐ

さて、 横笛のドレミファの音階は上のとおりだと説明しました。そして既に知っている曲を笛で吹くという前提でした。ならばあとは、その曲をドレミで歌うことができれば笛でも吹けるはずです。そうでしょう?

「ドレミドソーミ レーソーレー ドラミードシー」は
『千と千尋の神隠し』のエンディング『いつも何度でも』の出だしです。第二ポジションの音階で吹けるはずですよ。(つかここまで吹けたらあとは楽譜なしでも手探りで最後まで吹けるのではありませんか?)

楽譜にドレミファを書きこんでいく

既に知っている曲なんだから、ドレミファで歌うことができればそのまま笛に置きかえて演奏できるはずです。だから楽譜にドレミファを書きこんでいけばいいです。ダカーポがなんだとか6/8がどうとか、難しいことは無視してください。とにかく曲の部分部分でドレミファが分かりさえすれば、あとは既に知っている曲なんだから何とかなるはずです。とにかくドレミファをはっきりさせる、あとは記憶を頼りに笛で吹く。

ドレミファの書き方にコツがある

肝心なことをひとつ。楽譜の先頭にある#やbの個数で、ドの位置が上下にずれます。このような楽譜の読み方を「移動ド読み」と言います。とにかくこんな変わった読み方があるんだな、とだけ知っておいてください。

覚えたい曲の楽譜の先頭を見て、#やbの個数を数えて、下の表のとおりにドレミファを書きこんでいきます。

先頭に#がついている楽譜のドレミ


先頭にbがついている楽譜のドレミ


楽譜の途中に#やbが出てきたら

要はそこだけ半音上げるか下げるかして吹いてください、ということです。
箇所は少ないはずですから、いっそそこだけ、ああでもないこうでもないと正しい音を探すのが早いです。どうせその付近の音です。

そうでなくても(なんだかどうにもおかしい?)と思ったときには、自分の耳を信じて、その付近で正しい音を探してください。ひどい話ですが、お金を取って売っている楽譜でも間違っていることがあります。無料で配布している楽譜なら茶飯事です。

音を半音上げたり下げたりするには、指をひねって指穴を半分だけあけます。横笛の吹き方の基本的な話は過去の記事を参照してください。

私に説明できるのはこんなところですか。
因みにジブリの曲(久石譲の曲)は、けっこう臨時の#やbが多いですよ。
それでは健闘を祈ります。

 

2009年04月27日

横笛の吹き方 ポジションとカポ2

横笛の運指はファーストポジションがいちばん簡単で、セカンド、サードとなるにつれてだんだん難しくなります。

なのでカポ★1を用意しました。
カポを使うと難しさを1ランク下げることができます。カポは、横笛のいちばん上の指穴にかぶせます。カポには小さな指穴があいていて、指穴を半穴あけしたのと同じ効果があります。

ファーストポジションのスケール

●…指穴をふさぐ ○…指穴をあける

ファーストポジションの運指は最初から簡単です。カポは必要ありません。

セカンドポジションのスケール(カポ付き)

●…指穴をふさぐ ○…指穴をあける

セカンドポジションでカポをつけるとファの音の運指が簡単になります。ファーストポジションと同じ感覚で、指穴を下から順にあけていくだけでOK。ファの音はもともとそんなに使わない音なのですが、運指が簡単になればそのぶん演奏表現に気を配ることができるでしょう。

サードポジションのスケール(カポ付き)

●…指穴をふさぐ ○…指穴をあける 半分黒丸…指穴を半分だけふさぐ

サードポジションでカポをつけると難しいドの音の運指が簡単になります。これは本当にありがたい。自由にドの音にスライドを掛けることができるようになります。ファの音の運指はあいかわらず難しいのですが…あまり使わないのでなんとかのりきれるでしょう。
» 横笛にカポをつけてサードポジションで吹いてみた。

エンヤの『イブニングフォール』をサードポジションで吹いています。
ドの音にスライドを掛けまくるので、私の腕ではカポがないととてもこのように演奏することはできません。

カポは日曜演奏家向け

カポは上手な人には必要ありません。
私はカポを使うようになってから以前より横笛がヘタになった気がします。そのかわり演奏できる曲のレパートリーが増えて表現力もアップしましたから、よい取引だと思っています。

★1 ギターから用語を借りてきました。横笛にこのような概念があるのかどうか不明。

 

2009年04月24日

横笛の吹き方 ポジションとカポ1

横笛はどれでも1本で3とおりのスケール―ドレミファソラシド―を使うことができます。この3とおりのスケールについて、ポジション★1 という考え方を取りいれつつ詳しく説明します。

ファーストポジションのスケール

●…指穴をふさぐ ○…指穴をあける

要はふつうに横笛を吹いたときのスケールです。
ぜんぶ指穴をふさいだいちばん低い音からドレミファソラシド…です。運指はかんたんですし、わかりやすい。

ただし重大な欠点があって、ドより低い音を出すことができません。ドより低い音は意外によく使うものです、ゾウさんの歌も「ドーラソ ドーラソ」と低いソの音を使います。それなら2オクターブ目から吹けばいいのですが、それだと今度はものすごく高い音になってしまいます。

それとドの音にスライドを掛けられないというのもマイナス点です。スライドは、一つ下の指穴をふさいだ状態からするっとあけて、ひょえ~と音をずりあげる技です。ファーストポジションではドより下に指穴がありませんからスライドを掛けることができません。ドの音はもちろんよく使う音です、これにスライドが掛けられないのは痛い。

セカンドポジションのスケール

●…指穴をふさぐ ○…指穴をあける 半分黒…半分だけ指穴をふさぐ

上で説明したファーストポジションの、ファの音からドレミファソラシドになります。
いちばん低い音は?ソの音です、つまりいちばん低い音からソラシドレミファソ…となります。

このポジションはすごく使い勝手よいです。先ほど「低いソの音はよく使う」と説明しました。このポジションのスケールならばっちり、いちばん下の音から無駄なく使えます。よく使うドの音にスライドを掛けることもできます。新しい曲を覚えるときはまずは「セカンドポジションで吹けるかな」と試してみるのがよいです。(そしてそれはたいていうまくいきます。)

ファの音の運指がつらいのが難点、でもファの音は他の音ほど多く使わないからなんとかなります。

サードポジションのスケール

●…指穴をふさぐ ○…指穴をあける 半分黒…半分だけ指穴をふさぐ

上で説明したセカンドポジションの、ファの音からドレミファソラシドになります。
いちばん低い音は?レの音です、つまりいちばん低い音からレミファソラシドレ…となります。

もの悲しい雰囲気の曲―短調の曲―は下のミの音まで使うことがありまして、このような曲を吹くときに重宝します。よく使うドの音の運指が難しいというのが大きな欠点。よく見るとこのサードポジションはファーストポジションと1音しか音の高さが違いませんから、いっそファーストポジションで吹いた方が簡単なんですが。

このサードポジションはドの音にスライドを掛けることができるのです。
これは捨てがたい。とはいえドの運指がこんなに難しいようでは、とてもスライドどころではないのですが…

★1 ブルースハープから用語を借りました。横笛にこのような概念があるのかどうか不明。

 

2008年08月25日

横笛の吹き方、チューニング

横笛と他の楽器を合奏するときはお互いに音の高さを合わせる必要があります。相手がギターならギターのほうを横笛に合わせてチューニングすればいいのですが、ピアノのように簡単にチューニングできない楽器だと、横笛のほうを合わせるしかありません。

頷くと音が下がる

笛の音の高さはなんで決まるか。まずは指穴で決まりますよね。吹口に近い指穴をあけるほど高い音がします。それとは別に、吹口の大きさも音の高さに関係します。吹口が広くあいていると笛の音は全体的に高くなります。せまいと反対に低くなります。

横笛を吹くとき、下を向くように吹口にかぶさるようにして吹くと、吹口のあきがせまくなって全体的に音が下がります。上を向くように吹口を広くあけるようにして吹くと、全体的に音が上がります。ほんの少しですがこれで笛の音の高さを微調整できると覚えておくといいです。

» 吹口をふさいだりあけたり

あるいは演奏中にうんうんうんと頷いて音をゆらすテクニックとして応用できます。これは尺八の演奏者がいやいやいやと首をふるのと同じことで、尺八の場合、首を横にひねると吹口部分があいて音が高くなります。尺八の吹口はこの演奏テクニックに特化した形状をしているので、首ふりで半音から一音ほど音の高さが上下するそうですよ。すげー。

 

2008年08月16日

横笛の吹き方、つなげる・区切る 8

横笛の演奏の善し悪しは音のカタチできまります。音の出だしを整える、音と音の間を区切る方法について説明してきましたが、音をつなげて吹いてしまうのもアリです。

音をつなげて吹く

今まで音の出だしを整える、音と音の間を区切る方法について説明してきましたが、音を区切らない、つなげて吹くという選択肢もアリです。ふーっと息を吐きながら指を動かすと音がずるずるとつながって聞こえます。

一つ一つの音がはっきりしない、何を吹いているのか聴きづらい。だからフルートやリコーダーではタンギングを重視するのでしょうが。一曲ぜんぶずるずるとつなげて吹くのではなくて、場所々々で音を区切って吹いたりつなげて吹いたりすると、表情豊かな演奏になります。
» 最初にぜんぶ区切って、つぎに区切ったりつないだり

どこをつないでどこを区切るかはその人らしさ・個性になってくると思いますが。たとえば「1234 1234 …」という拍子に合わせて吹くときに、「1」「2」「3」「4」のところの音は区切って、それより細かい短い音はつなげて吹くだけでも、いい感じに聞こえます。本当は曲に応じて「ここを切る」「ここをつなげる」というのを工夫するのがいいです。

 

2008年08月07日

横笛の吹き方、つなげる・区切る 7

横笛の演奏の善し悪しは音のカタチできまります。音の出だしを整える、音と音の間を区切る方法について説明してきましたが、他にもいくつかありました。

クーッと吹く

息を吐きながらクククッと喉の奥で息を区切ります。タンギングの一種だと思います。これは多分、単体では使わないもので「トゥクトゥクトゥク」という感じに、速いフレーズを細かく区切って聴かせるときに使うものです。

タンギングを重視するコンサートフルートやリコーダーでは重要なテクニックなのだそうです。

腹筋で区切る

「タンギングではなく腹筋で音を区切る」という話を、フルートをされている人のブログで何回か見かけました。コンサートフルートで使うらしいのですが、なんなんでしょう。フフフッと吹け、ということなんでしょうか。謎です。

コンサートフルートの吹き方は専門家に教わるべき

ふつうの金属製のフルート―コンサートフルート―の吹き方は、専門家に教わるのがいいです。私はコンサートフルートに触ったこともないので、なにも教えることができません…

 

横笛の吹き方、唇を柔らかく吹く

コンサートフルートを習っている人のブログを読んでいると「唇が硬い、もっと柔らかく」と注意されることがよくあるようです。どうやら「唇が硬いと音も硬くなる」「唇が柔らかいと音も柔らかくなる」という見解があって、それで柔らかな音でフルートを演奏するために唇を柔らかくしなさい、ということらしいのですが。

唇が柔らかいとなぜ笛の音も柔らかくなるのでしょう。そもそも音に硬い・柔らかいなんてあるのでしょうか。なぜ硬い音がだめで柔らかな音ならよいのでしょうか。

音の硬さは音の形できまる

以前インディアンフルートの吹き方で説明しました。笛をいきなりプーッと吹きはじめてプツッと吹きおわると、そのたびに人間の耳にパチッパチッと衝撃がきます。意識されないほんの些細な衝撃なんですが。それでもいやなものはいやです。そのような音を延々聞かされるとなんだか音が汚い、ゴツゴツしていてヤな感じ、という印象を受けます。

柔らかい音というのは音の立ちあがりと音の終わりがなだらかです。コンマ秒単位の話なんですが、それでも人間の耳はちゃんと聞きわけて、やさしい気持ちのよい音だと感じます。

音が硬い・柔らかいというのはそういうことです。で、それが唇の柔らかさとなんの関係があるのでしょうか。

唇を柔らかくして吹いてみる

唇が柔らかいというのは言葉どおりの意味です。指でつまむとプヨプヨしているということです。唇を柔らかくして吹いてみましょう。

  1. 唇を閉じる。そのまま前歯の間に少しすき間をあける。
  2. ゆっくり息を押しだす。唇が閉じているので、唇の手前に息がたまってきます。
  3. もっと息を押しだす。風船がふくらむように上唇が前歯からはなれて浮きあがってきます。
  4. もっと息を押しだす。ついに唇のすき間から息がぷしゅーっともれてきます。

このぷしゅーという息で笛を吹きます。

浮きあがった上唇が息をなめらかに

浮きあがっている…といってもほんの少し、自分だけがわかる程度の現象ですが。この浮きあがった上唇が柔らかなクッションのように息の乱れや衝撃を吸収します。ためしにぷしゅーと息を吹きながら「ふっ、ふうー、ふっふっ」と息に大きく強弱をつけてみてください。わずかですが上唇がぷわんぷわんと上下にゆれるのがわかります。これが息の衝撃を吸収しているということです。

逆に、唇にシワが寄るほど力を入れると唇が固くなり、衝撃を吸収しなくなって、息の強弱がそのまま笛に伝わり、ガツンガツンという音になります。

すべてはほんとうに些細で微細な現象ですが…たしかにちがって聞こえます。

 

2008年07月29日

横笛の吹き方、つなげる・区切る 6

横笛の演奏の善し悪しは音のカタチできまります。舌先を使ったルーッという音は西洋のフルートやリコーダーに見られます。カチッとした音になります。

ルーッと吹く

ふうーっと息を吐きながら「ルルルッ」と舌先で息を区切ります。
» ルーッと吹く

舌先を使った音は立ちあがりの速い、総じてカチッとはっきりした音になります。速いフレーズも吹くことができます。このカッチリした音をよしとするか否かは文化によって異なります。日本の篠笛では禁止しています。(そもそも音を切るのをよしとしません。)一方、西洋のフルート・リコーダーではタンギングといって習得必須の技術です。

 

2008年07月23日

横笛の吹き方、つなげる・区切る 5

横笛の演奏の善し悪しは音のカタチできまります。プーッという音の出だしはそれなりに使えますが出典のはっきりしない怪しい吹き方です。

プーッと吹く

ふうーっと息を吐きながら唇で「プップッ、プーッ」と区切ります。音の立ちあがりはただふうーっと吹くよりもはっきりしています。だからある程度速いフレーズも吹けます。
» プーッと吹く

プーッの音には強弱があります。

唇を完全に閉じてしまう
唇をとじると息が途切れます。当然、音も途切れます。音と音の間がはっきりセパレートして聞こえます。
唇を完全に閉じてしまわない
「プップッ」ではなくて「フォッフォッ」という感じです。息が途切れないので音も完全には途切れません。音と音の間がやわらかくつながって聞こえます。

この吹き方はアリなのか?

この吹き方は、私がインディアンフルートの吹き方を横笛に転用したものです。そのインディアンフルートの吹き方にしたって「そんな吹き方もできる」という噂のレベルで、きちんと調べたものでも習ったものでもありません。試してみたらいい感じだったので私が好んで使っているというシロモノです。

ひょっとするとどこかの国ではよく知られた吹き方なのかもしれません。逆にプロの横笛奏者から「それでは上達しないっ」と注意されるかもしれません。

笛なのにラッパのように聞こえることがあっておもしろい、循環呼吸しやすい。という理由から私はこの吹き方をメインで使っていますが、どうでしょう。申し訳ないですが、参考にするなら自己責任でお願いします。

 

2008年07月11日

横笛の吹き方、つなげる・区切る 4

横笛の演奏の善し悪しは音のカタチできまります。音の終わりに気をつけるようにしたら、音の出だしにも気をくばるとよいです。

音の出だしもきれいに

音の終わりを十分に伸ばすようにして、すうっとやさしく終わるようにしたら、今度は音の出だしにも気をくばるといいです。音の出だしにはバリエーションというか、やり方がいろいろあります。バリエーションは笛や演奏スタイルによって違っていて、それがその笛らしさになっています。

フーッ吹く

唇をすこしあけてそのまま、舌も顎もどこも動かしません。そのまま肺の中の空気をフーッと吐きだします。
» フーッと吹く

立ちあがりの遅い、おっとりした音。カタチのはっきりしない音。反応がにぶい、鳴らない笛をむりやり鳴らしているようにも聞こえます。吹いているというより、風で勝手に鳴っているようにも聞こえます。

これで速いフレーズを吹くのは難しいでしょう。だからこの吹き方をメインに使うことはありません。特殊効果というか、ここぞというときに使うものです。たとえばエンディングで長く伸ばす音を吹くときに、ふうーっと吹きはじめてそのまま音が割れるほど息を強くして、またすうーっと消えていくみたいな?
使わなくてもいいです。とりあえず知っておいてください。

 

横笛の吹き方、つなげる・区切る 3

横笛の演奏の善し悪しは音のカタチできまります。演奏がブツブツとぎこちなく聞こえるときは、音の終わりを半拍長く伸ばすとよいかもしれません。

音を半拍早く終わらせてしまうというクセ

前回の記事で、音の終わりをすっとやさしく終わるようにするだけで演奏がキレイになると書きました。が、それ以前にそもそも初心者は音を十分に伸ばし足りない、音を終わらせるのが早すぎる、というクセがあります。

「1、2、3、4 1、2、3、4 …」と拍子をとりながら123の間を笛を吹き、4で休む、ということをやってみます。「ぷーーーーー休み ぷーーーーー休み …」という感じです。なにも考えずにこれを吹くと、なぜかたいていこのようになります。

「いちにいさん」の「ん」まで音を伸ばすべきなのに、「さ」でさっさと切ってしまいます。つまり半拍足りません。このためなんだかブツブツとぎこちなく聞こえます。きちんと正しく「ん」まで音を伸ばすとなめらかな演奏に聞こえます。

音の終わりは半拍長く伸ばすようにこころがける

これは人間のクセというか、意識していないと自然にそうしてしまうようです。音の終わりは、「ここで終わり」と思ったところから更にワンクッション―半拍―伸ばして終わるように心がけると演奏がいい感じになります。

 

2008年06月23日

横笛の吹き方、つなげる・区切る 2

横笛の演奏の善し悪しは音のカタチできまります。音の終わりをいきなりブツッと切るのでなく、すっとやさしく終わるようにするだけでワンランク上の演奏に聞こえるようになります。

音の終わりはやさしくていねいに

横笛を演奏するとき、まず音の終わりに気をつかいましょう。吹いている笛を、はい終わりブツッというふうに音を切ると粗雑な汚い演奏に聞こえます。一音一音の終わりをすっとやさしく終わるようにするだけで見違えるようにキレイに聞こえます。

たとえばデコレーションケーキのホイップクリームをプリ…ッと絞るようにですね、フーッと吹いている息をすっと細く小さく絞って消す感じです。長くのばす音はすーっと、手から離れた紙飛行機がどこまでも小さく飛んでいくように。短い音もそれなりに一つ一つていねいに。

まあ大変です。私もそんな完璧にできません。でも効果あるのでいつも気をつけるようにしましょう。

 

2008年06月13日

横笛の吹き方、つなげる・区切る 1

音色よりも音のカタチを大切に

横笛の音が出るようになったら好きな曲をマネして練習するのがいいです。「いやーまだ音が汚くて…」ああ音色についてはあまり気にしなくていいです、そのうちでいいです。音のきれい・汚いよりもっと大切なことがあります。
※ もちろん音色に気を配ることは大切です、とても大切ですよ。なんですが、初心者はなかなかこの「音のカタチ」に気を配りません。だから極論として、しばらく「音のカタチ」の重要さを説明します。

シンセサイザーの完璧な音色

まずは聴いてください。最初はシンセサイザーのフルートの演奏です。
» シンセサイザーのフルートの演奏

きれいな音なんですが…まるでオルガンのようで笛に聞こえません。カタい、つまんない。でも、最近のシンセサイザーは高性能です。一流のフルート奏者の音を録音してそれを音源に使っていたりしますから、音色に関してはそこらのセミプロよりも完璧なはずなんです。なぜこんなにぶっきらぼうな演奏なのか。

汚い音色のハンガリーの笛

次はハンガリーの笛の演奏です。音は汚いです。
» ハンガリーの笛の演奏

たしかに音は汚い、でも絶対にプロの演奏でしょう。めちゃくちゃカッコイイです。

笛の上手・ヘタは音色以外できまる

完璧な音色なのにぎこちないシンセサイザーのフルート、一方でガラガラ声なのにかっこいいハンガリーの笛。こうしてみると笛の上手・ヘタ、かっこいい・わるいには音色はあまり関係ないらしい、音色以外のなにかで決まっている、ということがわかります。

シンセサイザーのフルートに比べてハンガリーの笛はどこがいいのか(音色じゃないですよ)。ひらひらしているというか、自由自在というか。やわらかい、ダイナミック?そんな感じです。物理的に説明するとこうなります。

  • 音の大きさと高さがきめ細かに変化している

そう言われてみるとそんな感じに聞こえませんか。ものすごく強く吹いたと思ったらヘロヘロ吹いたり、音の高さもメロディーだけじゃなくて装飾音というか小節というか、強烈でうねっているように聞こえます。

笛の演奏の善し悪しは 1.音の大きさの操作と 2.音の高さの操作で決まります。ある程度メロディーが吹けるようになったら、次はこの2つを練習するのが笛の上達する早道です。
しばらく音の大きさの操作―音のカタチ―について書いていきます。

 

2008年06月04日

横笛の吹き方、運指・指使い・音階 5

上のオクターブの出し方

6穴フルートの音域はほぼ2オクターブです。運指については以前説明しましたが、上のオクターブの出し方についてちょっと補足させてください。

息を細く鋭くしぼる

上のオクターブの音は、下のオクターブと同じ運指で息を強く吹けばいいのですが、強く吹くというより、肺から吐きだす息はそのまま唇をしぼって息を細くする感じです。水道の蛇口を指でふさぐと、そんなに水を出していなくても細く鋭い水が吹き出るでしょう、あんな感じ。

一番上の指穴を少しだけあける

お勧めしていいのかどうかわかりませんが。一番上の指穴をほんの少しだけあけると上のオクターブの音が簡単に鳴ります。左手人差指をひねるようにして、ほんとうにほんの少しだけ指穴をあけます。あけすぎるとそれはそれで音が出なくなります。

息がゆるくても上のオクターブの音が出るので私はこの方法を使っていますが。ピッチがずれる、ファ・ソ・ラ…の高音がかすれるなどの問題があります。

 

横笛の吹き方、中休み 2

まずは曲を聴こう

念願の横笛を手に入れたら次は?まずは曲を聴きましょう、とにかく聴きまくりましょう。そして「これ、最高っ!」という演奏を探しだします。自分はどんな演奏スタイルが好きなのか、どんな演奏スタイルを目指すのか。これがはっきりしていないとどんなに練習したところでどこにも行きつきません。

国によって笛によって演奏スタイルは大きく違います。「こんな音もあるのか」と目からウロコってこともしょっちゅうです。ふつうのフルートでさえ、耳にしたことはあっても真剣に聴いたことはそうそうないのではありませんか。

篠笛

» 篠笛の演奏スタイル
» CDのお求めはこちら『the 笛 Spirit』

日本の横笛の代表格です。独りで吹いてよし、にぎやかに祭囃子を吹いてよし。総じて甲高い音が好まれるようです。茅の葉のように鋭い音色。思わせぶりなビブラート。西洋音階にのらない旋律が強い緊張感を生みだします。

バンスリ

» バンスリの演奏スタイル

インドの横笛。このふにゃふにゃ感はありえません。4度・5度の音程を平気でふにゃ~んとポルタメントします。特別な仕掛けでもあるのかと思ったらただの竹笛。名人に言わせると「コツもなにも、とにかくそのように吹くんだっ」とのこと。

アイリッシュフルート

» アイリッシュフルートの演奏スタイル

オーケストラからお払い箱になった時代遅れの横笛がアイルランドに流れつき根付きました。キョキョッ、という鋭い装飾音で音を区切るのはバグパイプのマネなんだそうです。

コンサートフルート

» コンサートフルートの演奏スタイル

ご存じ”あの”フルートです。こうしていろんな笛と聞き比べると、かなり特殊な横笛なんだなと思いました。一音一音の音程がきっぱりしていて、他の笛で見られる「ひょえ~」「ふにゃ~ん」というポルタメントをほとんど使いません。そのかわりグリッサンドを多用します。デジタルっぽい。

そのほか

ほかにも世界中にすごい数の笛があります。演奏スタイルも似通っていたり、ぜんぜん違っていたりします。とにかく聴いてみてください。そこからです。

 

横笛の吹き方、楽譜の読み方 6

「横笛で吹きたい曲があるんですけど、楽譜にシャープやフラットがいっぱい付いていて大変です。」という話をお客さんから伺いました。横笛で吹くならドレミの位置を上下にずらして楽譜を読む「移動ド読み」がうまくいきます。どれだけずらして読めばいいのかは決まっています。

楽譜を移動ドで読むときのドレミの位置(b編)

横笛のようなダイアトニックな楽器―ドレミは簡単だが半音が苦手な楽器―で演奏するときは、楽譜を移動ド読みするのがよいと説明しました。ホ長調の楽譜ならホの音(=ピアノの白鍵のミの音)からドレミ…と読みます。じゃあト長調のときは、ニ長調のときは?

どこからドレミを読むのかは楽譜によりけりですが、それは楽譜の左端についている#やbの数で一律に決まります。楽譜の左端にbが付いている場合のドレミの位置をまとめてみました。

譜面を「移動ド」で読めない人へ

「理屈は分かるが、ただでさえ楽譜を読むのがたいへんなのにドレミをずらして読めるものかっ。」という人へ。便利なプログラムを用意しました。ふつうにドレミを書いて、譜面に付いている#やbの数を指定すると、移動ドのドレミに変換します。

» 固定ドを移動ドに変換するプログラム

たいていの曲はこれで#とbが落ちて簡単になります。オマケみたいなプログラムなのでそこそこの性能ですが、よろしければご利用ください。

 

2008年04月17日

横笛の吹き方、楽譜の読み方 5

「横笛で吹きたい曲があるんですけど、楽譜にシャープやフラットがいっぱい付いていて大変です。」という話をお客さんから伺いました。横笛で吹くならドレミの位置を上下にずらして楽譜を読む「移動ド読み」がうまくいきます。どれだけずらして読めばいいのかは決まっています。

楽譜を移動ドで読むときのドレミの位置(#編)

横笛のようなダイアトニックな楽器―ドレミは簡単だが半音が苦手な楽器―で演奏するときは、楽譜を移動ド読みするのがよいと説明しました。ホ長調の楽譜ならホの音(=ピアノの白鍵のミの音)からドレミ…と読みます。じゃあト長調のときは、ニ長調のときは?

どこからドレミを読むのかは楽譜によりけりですが、それは楽譜の左端についている#やbの数で一律に決まります。楽譜の左端に#が付いている場合のドレミの位置をまとめてみました。

譜面を「移動ド」で読めない人へ

「理屈は分かるが、ただでさえ楽譜を読むのがたいへんなのにドレミをずらして読めるものかっ。」という人へ。便利なプログラムを用意しました。ふつうにドレミを書いて、譜面に付いている#やbの数を指定すると、移動ドのドレミに変換します。

» 固定ドを移動ドに変換するプログラム

たいていの曲はこれで#とbが落ちて簡単になります。オマケみたいなプログラムなのでそこそこの性能ですが、よろしければご利用ください。

 

2008年04月10日

横笛の吹き方、楽譜の読み方 4

「横笛で吹きたい曲があるんですけど、楽譜にシャープやフラットがいっぱい付いていて大変です。」という話をお客さんから伺いました。楽譜を横笛で吹くなら移動ド読みするとうまくいくのですが、ピアノなどと合奏するときに気をつけることがあります。

ダイアトニックな楽器で演奏するときの注意

横笛のようなダイアトニックな楽器―ドレミは簡単だが半音が苦手な楽器―で演奏するときは、楽譜を移動ド読みするのがよいと説明しました。チューリップならハ長調でもホ長調でもなんでも「ドレミ、ドレミ、ソミレドレミレ」と吹きます。

でも本当はホ長調のチューリップはやっぱり「ミファ#ソ#、ミファ#ソ#、シソ#ファ#ミファ#ソ#ファ#…」と吹くのが正しいです。でないとピアノと合奏するとき音の高さがずれてしまいます。
「じゃあやっぱりミファ#ソ#…と吹かないとダメじゃん。わあたいへん。」

さてどうするか?ホ長調用の横笛に取り替えて演奏します。
ホ長調用の横笛はふつうの横笛―ハ長調用の横笛―よりも少し音が高い。「ドレミ、ドレミ、ソミレドレミレ」と吹いても、出てくる音は「ミファ#ソ#、ミファ#ソ#、シソ#ファ#ミファ#ソ#ファ#…」になっています。ニ長調の曲を演奏するときは?ニ長調用の横笛を使います。ト長調の曲はト長調用の横笛です。これは便利。

欠点はいろいろな高さの笛をたくさん用意しなければならないこと。ハーモニカやオカリナのコンサートを観に行ったとき演奏者が大きさの違う楽器をずらーっと用意していて、「あんなにコレクションするなんてマニアだなー」と思った経験はありませんか?あれは別にマニアなわけではなくて、つまりそういうことなんです。

写真はオーバートン社のホイッスル一式。美しいですね。

 

2008年04月03日

横笛の吹き方、楽譜の読み方 3

「横笛で吹きたい曲があるんですけど、楽譜にシャープやフラットがいっぱい付いていて大変です。」という話をお客さんから伺いました。楽譜の読み方には「固定ド」と「移動ド」の二つがあって、横笛を吹くなら移動ド読みするとうまくいきます。

楽譜の移動ド読みとダイアトニック楽器

楽譜の読み方には二つあります。

  • いつもピアノの白鍵のドレミで楽譜を読む、#やbが付いていればその音を半音上げたり下げたりする…いつも同じドレミで楽譜を読むことから、このような読み方を「固定ド読み」と言います。
  • 一方で、ドレミの位置を上下にずらして譜面を読む読み方があります。これを「移動ド読み」と言います。

横笛のように、ドレミは簡単に吹けるんだけど半音を出すのは一苦労、という楽器をダイアトニックな楽器と言います。ダイアトニックな楽器を演奏するときは楽譜を移動ドで読むのが有効です。

たとえばホ長調のチューリップを固定ドで読むと「ミファ#ソ#、ミファ#ソ#、シソ#ファ#ミファ#ソ#ファ#…」です。と言われても、これがチューリップだとはピンとこないでしょう。

一方の移動ドで読むなら、ホの音(=ピアノの白鍵のミの音)からドレミ…と読みます。するとホ長調のチューリップは「ドレミ、ドレミ、ソミレドレミレ…」と読めます。これならすぐに吹けますね。このように曲のカタチがすぐに分かるというのが移動ド読みのメリットです。

ただし弱点があって、途中で移調・転調をするような曲を読むことができません。といってもそもそもダイアトニックな楽器は移調・転調が苦手ですから…そんな曲に手を出さないのが無難です。

 

2008年03月26日

横笛の吹き方、楽譜の読み方 2

「横笛で吹きたい曲があるんですけど、楽譜にシャープやフラットがいっぱい付いていて大変です。」という話をお客さんから伺いました。楽譜の読み方には「固定ド」と「移動ド」の二つがあって、よくやるやり方―固定ド読み―はピアノのような楽器に向いています。

楽譜の固定ド読みとクロマティック楽器

楽譜の読み方には二つあります。

  • いつもピアノの白鍵のドレミで楽譜を読む、#やbが付いていればその音を半音上げたり下げたりする…いつも同じドレミで楽譜を読むことから、このような読み方を「固定ド読み」と言います。
  • 一方で、ドレミの位置を上下にずらして譜面を読む読み方があります。これを「移動ド読み」と言います。

ピアノのように、半音をすぐに出せる楽器をクロマティックな楽器と言います。クロマティックな楽器で演奏するときは楽譜を固定ドで読むのが有効です。固定ドで読むメリットは、どんな音が出てきても怯まない、どんな曲でも得手不得手なく真っ平らに演奏できる、ということです。曲の途中で移調しようが転調しようが関係ありません。だあーっと最後まで演奏できます。そしてこのような演奏を可能にするのがクロマティックな楽器だといえます。(半音の苦手な横笛だとこうはいきません。)

ただし固定ドで読むと曲のカタチが見えにくくなります。
例えばホ長調のチューリップは「ミファ#ソ#、ミファ#ソ#、シソ#ファ#ミファ#ソ#ファ#…」です。と言われても、これがチューリップだとはピンとこないでしょう。

あるいは小学校の音楽の時間に「曲の最後がドで終わるのが長調の曲、ラで終わるのが短調の曲。長調の曲は明るい感じで、短調の曲は悲しい感じ。」のようなことを習いませんでしたか。そして「そんなこと言ったって実際の楽譜を見ると、ミで終わったりレで終わったりして、ぜんぜんそんなじゃないよ。」とグチったことはありませんか。

最近のカッコイイ曲は一概に長調だ短調だと決めつけることはできませんが、それでもたいてい、ドかラの音で終わるというのは本当です。そしてそんな基本的なことでさえ、楽譜を固定ドで読んでいては見えてこないのです。

 

2008年03月19日

横笛の吹き方、楽譜の読み方 1

「横笛で吹きたい曲があるんですけど、楽譜にシャープやフラットがいっぱい付いていて大変です。」という話をお客さんから伺いました。ピアノならシャープだろうがフラットだろうがそのまま強引に演奏してしまうところですが、半音を出すのに一苦労の横笛ではそうはいきません。

半音に強い楽器、弱い楽器

そもそも半音に強い―半音を簡単に出せる―楽器とそうでない楽器があります。

たとえばピアノは半音に強い楽器です。黒鍵を叩けば簡単に半音が出ます。このような楽器をクロマティックと言ったりします。クロマティックな楽器の本質は「全部の音をすぐに出せるように出来ている」ということです。全部の音を出せますからどんな曲でも弾けます。曲の途中で移調しようが転調しようが怯みません。

そのかわり演奏は比較的にむつかしくなります。ピアノの鍵の数は88、名曲「ネコふんじゃった」を演奏するのに必要な音の数が15個くらい?だとすると、演奏者の目の前には実に5倍以上の『絶対に使わない弾いてはいけない鍵』がずらっと並んでいるわけです。統計的に考えれば、そりゃ弾き間違えますよね…

一方の横笛はドレミを吹くのは簡単ですが、半音を出すためには指穴を半分開けたりと一苦労です。このような楽器をダイアトニックと言ったりします。ダイアトニックな楽器の本質は「必要最小限の音だけ用意している」ということです。そういう意味では日本の篠笛やインディアンフルートなども(音階がドレミではありませんが)ダイアトニック的な楽器と言っていいと思います。

ダイアトニックな楽器の演奏は比較的に簡単です。そもそも出せる音が少ないので間違えることも少ない。そのかわりちょっと音の高さを変えて演奏する、というようなことが難しい。曲の途中で移調・転調なんて勘弁してほしいです。このような楽器を演奏するときは「楽譜を移動ド読みする」とうまくいきます。

 

2008年02月07日

横笛の吹き方、中休み 1

半音記号の付いた楽譜を簡単に演奏するには

「横笛で吹きたい曲があるんですけど、楽譜にシャープやフラットがいっぱい付いていて大変です。」という話をお客さんから伺いました。たしかに。ハ長調の曲は分かりやすくていいのですが残念ながら、たいていの楽譜には#やbなど半音記号が付いています。「歌うと簡単な曲なんだから横笛でも簡単に吹ければいいのに。」まったくそのとおりです。

固定ドと移動ド

実は楽譜の読み方には二つあります。
ピアノの白鍵のドレミで楽譜を読む、#やbが付いていればその音を半音上げたり下げたりする…いつも同じドレミで楽譜を読むことから、このような読み方を「固定ド」と言います。

一方で、ドレミの位置を上下にずらして譜面を読む読み方があります。これを「移動ド」と言います。#やbの数にしたがって適切にドレミをずらして読むと、メロディーは劇的に簡単になります。

以下はホ長調の楽譜です。いつものように「固定ド」で読んだドレミを付けています。これを笛で吹くときは、#の付いている音を半音高くして吹くのを気をつけてください。

一方の「移動ド」というのはホ長調の場合、ふつうのミの音からドレミ…と読みます。同じ楽譜を「移動ド」で読よむとこうなります。

実はこれはチューリップの曲でした。「ドレミ ドレミ ソミレドレミレ」これなら簡単に吹けますね。

チューリップにかぎらず、たいていの曲はこのようにドレミの位置を上下にずらして読むと簡単になります。

譜面を「移動ド」で読む方法

このように便利な移動ド読みなのですが、ただでさえ楽譜を読むのがたいへんなのに、ドレミをずらして読めるものかっ。ということで、プログラムを作りました。ふつうにドレミを書いて、譜面に付いている#やbの数を指定すると、移動ドのドレミに変換します。

» 固定ドを移動ドに変換するプログラム

あるいはページ右の『ユーティリティ』からでもご利用になれます。

たいていの曲はこれで#とbが落ちて簡単になります。オマケみたいなプログラムなのでそこそこの性能ですが、よろしければご利用ください。

移動ドの詳しい説明は次回にでもしましょう。

 

横笛の吹き方、運指・指使い・音階 4

半音の出し方

6穴フルートの半音の出し方です…というより世界中の笛はたいていこうやって半音を出します。

半分指穴をふさぐ

指をひねるようにして指穴にすき間をつくります。指穴のすきまが半分なら音の高さも半分になる、わかりやすいといえばわかりやすいですが音が不安定になりがちです。

指穴を一個とばしでふさぐ

こちらの方が簡単ですが、笛の種類や音の位置によってはうまくいかないことがあります。

シャープやフラットの付いている楽譜を演奏するには

「吹きたい曲があるんですけど、楽譜にシャープやフラットがいっぱい付いていて大変です。」という話をお客さんから伺いました。

ちょっと待ってくださいっ、シャープやフラットの付いている音符を全部半音にするつもりですかっ!。シャープやフラットがいくつ付いていようと、たいていの曲はふつうに吹くことができます。「え、でもシャープの付いているところをふつうに吹いたらヘンな音になりますけど。」…いやそういうことでもなくて。

すみません、プログラム開発の納品が月末で時間がありません。シャープやフラットのついている楽譜を演奏する方法は次回に説明させてください。

 

2008年01月20日

横笛の吹き方、運指・指使い・音階 3

6穴フルートのべつの音階

6穴フルートの音階は下からドレミファ…のほかに、もう一つべつの音階が使えます。

○…指穴をあける、●…指穴をふさぐ

» 下からソラシド…

この音階が便利なのは低いドよりもさらに低い音を使うことができることです。ふつうの音階とこちらの音階が使えたらたいていの曲をカバーします。どちらかというとむしろ、こちらの音階の方をよく使うかもしれません。

  • ファの指使いがなんだか変わっていますが、こんなものだと納得してください。
  • お手持ちの横笛によってはファの音がうまく出ないことがあります。そのときは以下のようにします。

①の方法…指穴をもう一つふさぎます。
②の方法…一番上の指穴だけ半分あけます。

 

2008年01月15日

横笛の吹き方、運指・指使い・音階 2

6穴フルートの音階ぜんぶ

6穴フルートの音階は、下のドの音から上のドの音までだいたい2オクターブ出ます。2オクターブぜんぶの運指は以下のようになります。

○…指穴をあける、●…指穴をふさぐ

» 下からドレミファ…

高いオクターブのドレミは低いオクターブのドレミと同じ運指で、息をぎゅっと強めに吹きます。唇の先を固くしぼって息を細く鋭くピューッという感じに吹きます。

  • 高いシの音は…指穴をぜんぶあけて強く吹けば出ると思うのですが、私は出せません。
  • 一番高いドの音は力いっぱい細く鋭く吹きます。でもふつうは使わないと思います。

人間の気持ちよく歌える音域が1オクターブ程度ですから、ふつうの曲ならこれでだいたい吹けます。

 

2008年01月01日

横笛の吹き方、運指・指使い・音階 1

運指の練習

6穴フルートを鳴らせるようになったら運指の練習をしましょう。
フルートの持ち方・構え方は前に説明したとおりです。

  • 吹口に近い3つの指穴を左手で押さえます
  • 残りの3つの指穴を右手で押さえます

最初にぜんぶの指穴をあけて吹いてみてください。音が出ますか?
音が出るのを確認したら、吹口に近い指穴から順にふさいでいってください。
指穴を一つふさぐたびに、そこで音が出ることを確認してください。
大丈夫なら更に指穴をふさいでいきましょう。もし音がかすれたり出なくなったりしたら、指穴をぜんぶあけて最初からやりなおします。

音が出なくなるのは、次の理由が考えられます。

  • 息を吹く角度が狂ってきた
  • 指穴がきちんとふさがっていない、すき間があいている
  • 息が強すぎる★1

★1 指穴をふさぐにつれて音が低くなります。低い音ほどそっと吹かないとヘンな音になります。「ふぅーっ」と吹くよりも「ほぉーっ」という感じです。

6穴フルートの音階

6穴フルートの音階は上からシラソファミレドです。指穴をぜんぶあけたときの高い音がシ、全部ふさいだ低い音がドになります。

○…指穴をあける、●…指穴をふさぐ

» 上からドシラソファミレド

ちなみに高いドの音は低いドと同じ指づかいで、息をぎゅっと強めに吹きます。これは次回に詳しく説明しますね。

 

2007年12月24日

横笛の吹き方、持ち方・構え方

横笛を吹くのは初めてでも、吹いているのを見たことはあるでしょう。右の図のように、6穴フルートの吹口に近い3つの指穴を左手で、残りの3つの指穴を右手で押さえます。

  • 吹口に近い3つの指穴を左手の人差指・中指・薬指で押さえる
  • 残りの3つの指穴を右手の人差指・中指・薬指で押さえる

座っても立ってもいいですが、背筋をまっすぐ伸ばしましょう。でないと息をたくさん吸い込むことができません。笛は地面に水平~ちょっと傾いたくらいに構えます。

指穴は、指の腹(=指紋のうずまきのあるところ)★1 で押さえればいいと思います。親指の位置は人差指と同じか、あるいは中指と同じ位置にすると楽です…左の写真のようにすると痛いです。

★1 大型の長い笛の場合、指の関節と間接の間で指穴を押さえます。やりにくいですが、そうしないと指穴を押さえられませんし。
» 大きな笛の指穴を押さえるには

 

2007年12月19日

横笛の吹き方、ビブラート

横笛の音が出せるようになったら、ついでにビブラートも練習しましょう。笛の演奏中に音をぴぃー~~~~ときれいにゆらすアレです。

ビブラートをかけるには、横笛をふーっと吹きながらうふふふっと笑います。おおざっぱに言うとビブラートはそういうことです。

» ビブラートをやってみる

コツが分かったらいろいろやってみましょう。大げさにやってみたり少しだけやってみたり、ゆっくりまたは速く。日本の演歌みたいにやってみたり、TVの音楽番組で観たフルートプレイヤーを真似してみたり。

日常では笑う筋肉を意識して使うことがないので最初はきれいなビブラートがかかりませんが、慣れの問題です。そのうち「うりゃっ」と思っただけで勝手にビブラートがかかる体質になります。

 

2007年12月14日

横笛の吹き方、音を出す 2

遅くなりました。横笛の音の出し方を説明します。最初はドレミとか指穴のことは忘れて、音を出すことに専念しましょう。

  1. まず、横笛の吹口付近を両手で持ってください――スイカを持って食べるときのような手つきです――。
  2. 吹口を唇に当てます。唇の赤い部分と肌色の部分の境目のところが、吹口の手前のふちに当たる感じです。★1
  3. そのままスイカの種を飛ばすように息を吹いてください。あるいは熱いお茶をふぅーっと吹き冷ます感じでしょうか。このとき吹口の向こう側のふちを狙って息を吹きつけます。
  4. 息は吹口の穴には入りません、吹口の上をかすめていく感じです。息が吹口の上をかすめていくときに向こう側のふちにひっかかって、皮一枚うすく削ぐような感じです。

★1 吹口を当てる位置は厳密には、唇の赤い部分と肌色の部分の境目よりもわずかに内側―赤い部分―のほうがよいようです。これは個人差もあるでしょうから、いろいろ工夫してみてください。よくわからなければ気にしなくていいと思います。

横笛の音は、息が吹口のふちにかすって削げるときの音です。

横笛をくりくり回して息と吹口の角度をいろいろ変えて試していると、そのうちに音が出ると思います。音が出るようになったら、より大きな、きれいなはっきりした音が出るように試してみてください。

» とにかく音を出してみよう

あんまり鳴らないようだったら…友だちに吹かせてみてください。鳴らせる人が必ずいます、その人に教わってください。風やネコが鳴らすくらいですから、そんなに難しいことではありませんよ。

 

横笛の吹き方、音を出す 1

横笛を鳴らすのは簡単です。
「そりゃ吹ける人にとってはそうでしょうけれど…」という話ではありません。横笛は鳴るものなんです。

横笛は風が吹いただけで鳴ります

写真はドイツ、ハイデルベルグ北東のSchriesheimer Kopf山頂にある展望塔です。この展望塔は手すりのパイプにあちこち穴が開けられています――横笛ですね――、これが山風を受けてピーピー鳴ります。
» こんな音

どうです、アタリがよければ風が吹くだけで鳴るんです横笛は!

ネコも鼻息で横笛を鳴らします

以前、旅行に行った両親に代って実家でネコのお守りをしたことがあります。ある晩、横笛を膝の上に乗せてブログの記事を書いているとネコが来て、興味深げに横笛に顔を近づけました。すると「ピー」というかすかな、でもはっきりした音が鳴ったのです。ネコはびっくりしてちょっと身を引き、鼻先を近づけるとまた「ピー」という音がします。私も一瞬何事っ?と驚きましたが、ネコの鼻息が横笛の指穴に当たって鳴っていたのですね。

どうです、アタリがよければネコでも鳴らせるんです横笛は!!

風やネコにできて人間様にできないわけがないでしょう。
実際いろいろな人にやらせてみるとみんな、あっけないほど短時間に横笛を鳴らすことができました。

もしカップラーメンのお湯を沸かしている間に音が出るようになるなら、横笛に挑戦してみたいと思うでしょう。楽器を演奏できると一生楽しめます。周りの人を楽しませることもできます。

 

2007年12月03日

横笛の吹き方、上達の秘訣

先日書いた心構えに続いて、横笛…というより楽器全般に言えることですが上達する秘訣です。

ずっといつまでも続けること

ずっといつまでも続けること、これが秘訣です。これだけです、これに尽きます。
知り合いから拍手をもらうレベルであれば、単に続けているだけでいつの間にか到達します。

ただし決して投げ出さず、ずっと続けなければなりません。
がんばらなくていいです。一所懸命にならなくていいです。毎日でなくていいです。とにかく続きさえすればいいです。だから、続けるためにあらゆる手管を弄します。自分に優しく、ムリせず、だましだまし、時は背水の陣を敷きつつ、続けること。「週に一度でも触ったら私えらい」でも立派なものです。私も最初の半年はそんなペースでした。ある程度思うように吹けるようになると面白くなって、そこから急激に上達しました。(単純に触る時間が増えただけだと思うのですが。)

笛は必ずいつも目につく場所に放置してください。引き出しにしまったりしたらいつか忘れてしまいます。

それと、一所懸命に練習しすぎてはいけません。
脳生理学的に言えることでして、できないことを意固地になって練習し続けると、"できないのが上手"になります。つまりヘタのまま固まってしまいます。
新しいことを覚えるということは、脳のシワが増えるということですから、覚える速さには化学的に限界があります。「これは煮詰まったな」と思ったら数日は他の遊びをするのがいいです。案外、練習していないのにできるようになっていたりします。

誰から頼まれたわけでもありません、無理する必要もありません。とにかく続けるだけです。
それだけでいつのまにか、みんかなら「私にも教えてよ」「町内のお祭りに出演してもらえる?」と引っ張りだこになります。

がんばってください。いや、がんばっちゃいけないのか。

 

2007年12月01日

横笛の吹き方、心構え

これから横笛―6穴フルート―の吹き方について書いていきますが、まず最初に、心構えとでも申しましょうか、

志(こころざし)を低く持とう

もし横笛を吹けるようになったら、あなたは将来どうしますか。ウィーンのインペリアルホールに立って、貴人方々の満場の拍手を浴びることを夢見ていますか。

それならあなたは人生のほとんどを横笛につぎ込む必要があります。でも勉強や仕事で忙しいのに、そんな時間があるのですか。そもそも人生をつぎ込むほど、あなたは横笛のことを熱愛しているのですか。

志を低く持ちましょう、身の丈に合わせて。
登山を始めたからといってみんなエベレストを目指す必要はありません。北九州市民なら皿倉山で足を慣らして福知山と英彦山で自信をつけて、最終的に久住山を征服すれば上出来でしょう。

横笛なら自分で演奏していて「あ、今のいい感じっ」とこっそり自惚れたり、公民館のお楽しみ会で一曲披露してご町内のみなさんに拍手をもらったり、その程度です。
路上演奏していて気前のいい酔っぱらいから千円札をもらうのも、それで食っていくというほど深刻でなければ、実はその程度です。

目標を低く、そこそこのレベルまで手っ取り早く上手になればいい。
これでよろしくお願いします。

 

2007年11月29日

横笛の吹き方、概説

これから横笛―6穴フルート―の吹き方について書いていきます。他の記事も書きながらの作業なので日毎に更新する、というようなことはできません。週に一度、街の音楽教室に通うようなテンポでおつきあいしていただけるとうれしいです。

6穴フルートとは

6穴フルートとはここでは、ヨーロッパ全域で散見される素朴な横笛の総称を指します。細長い管に、吹口と6つの指穴を開けただけの簡単な構造をしています。"6つの指穴"というのはドレミファソラシの7音を出すのに必要最小限な指穴の数で、だから簡単な運指でドレミを鳴らすことができます。そのかわり半音を出すのは苦手で、だから違う調で演奏するときはムリせずに、その調専用の音程のフルートに持ち替えて演奏します。
» こんな音

歴史

ヨーロッパにおけるフルートの歴史は12世紀のドイツから始まりました。当時は「フルート(=笛)」と言えば縦笛リコーダーのことを指しましたから、わざわざ「横向きに吹くフルート」と呼んでいました。この横向きに吹くフルートは、ルネサンス末期にはヨーロッパ全土に普及して、マーチングバンドや大道芸、室内演奏会などで好んで使われるようになりました。

その後オーケストラで使われるようになったフルートはハイテク化していき、現在で「フルート」と言えば誰でも知っているあのフルート=コンサート・フルートを指すようになりました。

一方の6穴フルートは昔ながらの形を今に伝え、ヨーロッパの田舎のお祭りやマーチングバンドなどで根強く愛されています。
» The Renaissance Flute